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[2022年10月11日] 「第55回日本女子ソフトボールリーグ」第4節 サファイアセクションを振り返って

「第55回日本女子ソフトボールリーグ」第4節
サファイアセクションを振り返って


 去る9月30日(金)~10月2日(日)の3日間、「第55回日本女子ソフトボールリーグ」第4節が開催され、「サファイアセクション」は岡山県新見市・憩いとふれあいの公園野球場を会場に実施された。
 結果は、「第3節」まで8勝2敗で「首位」独走態勢に入っていた靜甲がこの「第4節」も3連勝。通算成績11勝2敗で「サファイアセクション」1位が確定。「大混戦」となっていた2位争いは、今節を2勝1敗で乗り切ったCitrine Ichinomiyaが頭一つ抜け出し、通算成績7勝6敗で2位の座を確保。花王コスメ小田原 フェニックス、平林金属 Peachblossoms、小泉病院 Blue Arrowsの3チームが6勝7敗の「同率」で並び、3チームの「直接対決」の勝敗は全チーム「2勝2敗」で決着つかず、「直接対決」における「得失点差」での争いとなり、「得失点差」+6の花王コスメ小田原 フェニックスが3位、+1の平林金属 Peachblossomsが4位、-7の小泉病院 Blue Arrowsが5位の順となり、厚木SCは2勝11敗で残念ながら最下位に終わった。
 ここでは「第4節」の戦いを振り返り、今シーズンの「サファイアセクション」を総括してみたい。
※第4節終了時点、「サファイアセクション」各チームの成績はこちら


 1位 靜甲 11勝2敗
【第4節試合結果】
・9月30日(金) ○1-0 vs 花王コスメ小田原 フェニックス
・10月1日(土) ○2-1 vs 平林金属 Peachblossoms
・10月2日(日) ○1-0 vs Citrine Ichinomiya


 「第3節」まで8勝2敗で首位を快走。2位につけていた小泉病院 Blue Arrowsに新型コロナウイルス陽性者が出てしまい、「第3節」への出場を見合わせ、予定されていた2試合が「不戦敗」となったこともあり、「首位独走」となっていた靜甲が、この「第4節」も3連勝。通算成績11勝2敗で「サファイアセクション」1位となり、「日本リーグ優勝」をかけた「順位決定節」に駒を進めた。
 しかし……この「第4節」での戦いは、決して楽なものではなかった。初戦の花王コスメ小田原 フェニックス戦は毎回のように走者を出しながら、花王コスメ小田原 フェニックスの「エース」朝比奈さくらから「決定打」を奪えず、0-0のまま、延長タイブレークに突入。「Wエース」の一人・山本すみれが被安打3の力投で相手打線を抑え込み、延長タイブレークに入っても得点を許さず、延長8回裏、田沼華乃のライト線へのサヨナラ安打で息詰まる投手戦にピリオドを打ち、1-0の完封勝利。
 続く平林金属 Peachblossoms戦は初回に1点を失う苦しい試合展開。ようやく5回表、半田由佳、田村ひかりの連打、盗塁で無死二・三塁の絶好機を作り、櫻井円香のスクイズ、八鍬あゆみの適時内野安打で2点を挙げ、試合をひっくり返し、先発・山本すみれが2回以降は得点を許さず、2-1で逃げ切り。苦しみながらも「連勝」を飾った。
 最終戦は「Wエース」のもう一人・豊田彩乃が7回まで被安打2・無失点と好投したが、今節「湿りがち」な打線が援護できず、0-0のまま、延長タイブレークへともつれ込み、延長8回裏、タイブレークの走者を犠打で三塁へ進め、櫻井円香がヒットエンドランを決め、サヨナラ! この試合も1-0で完封勝利を収め、今節「3連勝」。通算成績11勝2敗でレギュラーシーズンを終えた。
 ただ……この後、「日本リーグ優勝」を争う「順位決定節」を見据えた場合、若干の「不安要素」が残る試合内容であった印象は否めない。山本すみれ、豊田彩乃の「Wエース」は相変わらずの安定感を見せ、投手陣は充実、計算の立つピッチングを見せてくれたが、打線は3試合で4得点と振るわず。2位争いが「大混戦」となっていたことから、その2位争いを演じるチームが目の色を変えて、必死に挑んできた……ということもあると思うが「首位独走」のチームが「強さ」を見せつけた、とは言い難いものがあった。
 特に打線が「つながり」を欠き、初戦が6安打しながらタイブレークでのサヨナラの1点のみ。2戦目も7安打しながら2得点。最終戦に至ってはわずか2安打と「打撃不振」が深刻化していた。本来なら「打線の核」となるべき中心打者、「キャプテン」鹿目真実、田沼華乃が完全に「ブレーキ」となってしまい、鹿目真実は初戦の第1打席でライト前ヒットを放った後、7打席ノーヒット。最終戦では打順を6番に下げられてしまった。田沼華乃は初戦の最終打席でサヨナラ安打を放ったものの、今節3試合で8打数1安打。打線を「分断」する要因となってしまっていた。二人の調子が上がらないとみて、最終戦は大幅に打順を組み換えて臨んだものの、打線の「機能不全」はさらに深刻化してしまった感があり、「日本リーグ優勝」を実現するには二人の「復調」が大きなカギとなりそうだ。7月の全日本実業団女子選手権大会を制したときのように鹿目真実がトップバッターとして打線を引っ張り、田沼華乃がポイントゲッターとならなければ、靜甲「本来の姿」を取り戻すことはできない。幸い「順位決定節」まで時間はある。「順位決定節」では全日本実業団女子選手権大会を制したときのような「爆発力」を期待したい。そのためにも……二人の「復調」が待たれる。

 

11勝2敗で「サファイアセクション」1位の靜甲。「日本リーグ制覇」なるか!?


 2位 Citrine Ichinomiya 7勝6敗
【第4節試合結果】
・9月30日(金) ○1-0 vs 小泉病院 Blue Arrows
・10月1日(土) ○4-2 vs 花王コスメ小田原 フェニックス
・10月2日(日) ●0-1 vs 靜甲


 「第3節」で連勝し、通算成績5勝5敗の「同率2位」でこの「第4節」に臨んだCitrine Ichinomiya。初戦で5勝5敗の「同率2位」に並ぶ小泉病院 Blue Arrowsとの「直接対決」が組まれ、息詰まる投手戦を展開。4回裏、宮本星南のライトスタンドへ運ぶ「値千金」の一発で待望の先取点を挙げ、この1点を「エース」松本菜摘の被安打3の力投で1-0の完封勝利。「大混戦」の2位争いから一歩抜け出す、「大きな1勝」を挙げた。
 2戦目、花王コスメ小田原 フェニックス戦は3回表に2点を先制される苦しい試合展開となりながら、4回裏、2本の安打と死球で一死満塁とし、船山優果が二者を還す同点のタイムリー! 試合を振り出しに戻すと、6回裏には藤田秋花、林佑奈の長短打で勝ち越しの2点を挙げ、4-2で快勝。「サファイアセクション」2位の座の確保に大きく前進した。
 最終戦は「首位」靜甲との対戦となり、0-1のサヨナラ負けを喫したものの、通算成績7勝6敗で「サファイアセクション」2位の座を確保。「交流戦」終了時点では3勝5敗と黒星先行の苦しい状況に追い込まれながら、「第3節」「第4節」の5試合を4勝1敗で乗り切り、2位の座に滑り込んだ。
 「エース」松本菜摘が9試合に登板し、48回1/3を投げ、勝ち星的には3勝3敗ながら防御率0.72は「サファイアセクション」トップの数字。規定投球回数には達しなかったものの、3勝を挙げ、特に「第3節」での好リリーフでチームの「救世主」となった山下紗季(3勝2敗・防御率2.26)の存在も心強い。
 カギを握るのは打線。チーム打率2割2分2厘は6チーム中5位、総本塁打も2本で「プラチナセクション」ホームランダービートップの堀あかね(大和電機工業)、大内麻里奈(YKK)の4本塁打の半分に過ぎない。総得点20は「サファイアセクション」最下位と心配な数字が並ぶ。投手陣が踏ん張り、ロースコアで競り勝つ……というチームではあるが、それだけに打線に当たりが出れば「勝機」はもっともっと出てくる。「サファイアセクション」打撃ランキング6位の「恐怖の9番打者」船山優果(3割5割7厘)からトップバッター・仁科芽惟(3割8厘)でチャンスメイクし、中軸が還す「得点パターン」が確立できれば……「下剋上」も夢ではない。「順位決定節」でどんな戦いを見せてくれるか!? 期待と注目が集まる。
 

「エース」松本菜摘の力投で7勝6敗の2位に滑り込んだCitrine Ichinomiya


 3位 花王コスメ小田原 フェニックス 6勝7敗
【第4節試合結果】
・9月30日(金) ●0-1 vs 靜甲
・10月1日(土) ●2-4 vs Citrine Ichinomiya
・10月2日(日) ○3-0 vs 厚木SC


 「第3節」を終え、5勝5敗の「同率2位」。「第4節」では「大混戦」の2位争いを演じながら1勝2敗と星を伸ばせず、通算成績6勝7敗で3チームが並んだが、同率で並ぶ3チームの「直接対決」の「得失点差」での争いを制し、3位となったものの、「日本リーグ優勝」を争う両セクション「2位以上」にはあと一歩届かず……悔しい結果となった。
 初戦は「首位」を走る靜甲と延長タイブレークにもつれ込む熱戦を展開。息詰まる投手戦の末、「エース」朝比奈さくらの力投空しく、0-1のサヨナラ負けを喫した。
 続くCitrine Ichinomiya戦は、この試合に勝たなければ「2位」の可能性がなくなり、「日本リーグ優勝」を争うチャンスも消滅する「重要な一戦」となったが……2点を先制しながら逆転負け。力投を続けてきた「エース」朝比奈さくらが「限界」に達したか、5回終了時点で降板すると、6回裏、代わった左腕・萩原愛が3本の長短打を浴び、2点を奪われ、万事休す。「2位」となる可能性、「日本リーグ優勝」の夢が消えてしまった。
 最終戦、厚木SC戦は「エース」朝比奈さくらが「意地」の力投。6回を無失点に抑えると、最後は左腕・萩原愛が三者凡退で締め、最終戦を3-0の完封勝利で締めくくった。
 「サファイアセクション」最多の11試合・67回2/3を投げ、フル回転した「エース」朝比奈さくらを中心に、堅い守り(失策数6は「サファイアセクション」最少、守備率0.983は平林金属 Peachblossomsと並んでセクショントップの数字)で懸命に戦ったが、チーム打率1割7分2厘、総本塁打0はいずれもセクション最下位の数字で総得点26も6チーム中5位と攻撃力・得点力を欠いた。この「第4節」でも「エース」朝比奈さくらの「得点シーン」を期待し、打線の援護を切実に願う表情が印象的だった。報われない力投……それでもなお必死に投げ続ける姿は痛々しくさえあった。さらに「上」を狙うのであれば「打線の強化」に本格的に乗り出す必要がある。
 

花王コスメ小田原 フェニックスの「エース」朝比奈さくらも力投したが……6勝7敗で惜しくも3位


 4位 平林金属 Peachblossoms 6勝7敗
【第4節試合結果】
・9月30日(金) ○6-3 vs 厚木SC
・10月1日(土) ●1-2 vs 靜甲
・10月2日(日) ○2-4 vs 小泉病院 Blue Arrows


 「ホーム」開催となる「第4節」で「奇跡の逆転」を信じ、戦った平林金属 Peachblossoms。初戦の厚木SC戦を11安打6得点の打線の活躍で6-3と快勝し、2戦目、「首位」を走る靜甲に挑み、初回に1点を先制したのだが……5回表、それまで「無失点」と好投の先発・岡﨑栞菜から左腕・中村絢夏につなぐ継投策が結果的に「裏目」となり、3本の長短打を集中され、2点を奪われ、1-2の逆転負け。この試合に敗れたことで「2位」での「順位決定節」進出の可能性が消え、同時に両セクション2位以上のチームで争われる「日本リーグ優勝」かけた戦いの舞台に立つこともできなくなってしまった。
 川渕真由が打率4割8分7厘で「サファイアセクション」打撃ランキングトップに立つハイアベレージを叩き出し、松口明日香も同3位の3割7分9厘の好成績を残す等、チーム打率2割7分はリーグトップの数字。一方、チーム防御率4.01・総失点53はいずれもセクション最下位と投手陣が踏ん張り切れなかった。「右のエース」岡﨑栞菜、「左腕」中村絢夏、「キャプテン」橋口紫織の投手陣、いずれも「投打二刀流」でタイプの違うピッチャーが揃うだけに「継投策」に活路を見出そうとしたのかもしれないが……投手起用に「迷い」が感じられ、「どっちつかず」の結果となった感は否めない。岡﨑栞菜が唯一、規定投球回数に達し、3勝(1敗)を挙げ、防御率1.74の成績を残しただけに、もっと「エース」として信頼・信用してもよかったのではないだろうか。策士策に溺れる……ではないが「継投策」へのこだわりがかえってマイナスに作用してしまった……そんな印象が残る。
 

奇跡の大逆転を信じて戦った平林金属 Peachblossoms。6勝7敗の4位とあと一歩届かず……


 5位 小泉病院 Blue Arrows 6勝7敗
【第4節試合結果】
・9月30日(金) ●0-1 vs Citrine Ichinomiya
・10月1日(土) ○4-2 vs 厚木SC
・10月2日(日) ●2-4 vs 平林金属 Peachblossoms


 「交流節」を終えたところで5勝3敗の2位の好位置につけていながら、新型コロナウイルス陽性者が出てしまったことで「第3節」の出場を見合わせ、そこで行われるはずだった2試合が無念の「不戦敗」扱い。「2敗」が加算されたことで一気に状況が苦しくなり、5勝5敗の「同率2位」でこの「第4節」を迎えた小泉病院 Blue Arrows。
 初戦、「同率2位」に並ぶCitrine Ichinomiyaとの「直接対決」に臨んだが、Citrine Ichinomiyaの「エース」松本菜摘に6回までわずか1安打と抑え込まれ、最終回の一死満塁も攻めきれず……4回裏に本塁打「一発」で失った1点が重くのしかかり、0-1の完封負け。2位争いから大きく後退する手痛い黒星を喫した。
 2戦目の厚木SC戦は4-2で快勝し、最終戦、「9点差以上」の勝利で「逆転2位」の可能性がわずかながら残されていたが……果敢に「攻める」姿勢を見せながら、それが空回りしたか、「運」にも恵まれず、初回に3点を失い、「逆転2位」の可能性はさらに遠のき……2-4で敗れ、3チーム並んだ「同率」チーム内での対戦の「得失点差」の争いで5位まで順位を落としてしまった。
 リーグ加盟初年度、結果的には「サファイアセクション」5位に終わったが、上位争いを演じたこの「経験」を来シーズンにつなげてほしい。10試合に登板し、花王コスメ小田原 フェニックス・朝比奈さくらに次ぐ67回を投げ抜いた「エース」原田悠に続く投手の育成が急務だ。打線は「キャプテン」の立川夏波(3割4分6厘)、山下りら(3割4分4厘)、上田爽樺(3割3分3厘)ら、旧・日本リーグ1部で「実績」のある選手たちが、それに見合うだけの成績を残してはいるが、チーム全体の底上げ、レベルアップを図っていく必要があり、そのためにも今シーズンの「経験」を今後に生かしてほしいものである。
 

「第3節」での「不戦敗」による2敗が響き、6勝7敗で5位に終わった小泉病院 Blue Arrows


 6位 厚木SC 2勝11敗
【第4節試合結果】
・9月30日(金) ●3-6 vs 平林金属 Peachblossoms
・10月1日(土) ●2-4 vs 小泉病院 Blue Arrows
・10月2日(日) ●0-3 vs 花王コスメ小田原 フェニックス


 厚木SCは残念ながら今節3連敗、通算成績2勝11敗で「サファイアセクション」最下位に終わった。
 初戦の平林金属 Peachblossoms戦は、初回に先手を取り、1-1の同点に追いつかれた直後の2回裏に勝ち越す等、序盤は「互角」の試合展開を見せていたのだが……投手陣が11安打を浴び、6失点と踏ん張ることができず、3-6の逆転負け。
 2戦目、小泉病院 Blue Arrows戦は、初回に2点を先制され、4回表に1点を返し、1点差に迫ったものの、再び突き放され、2-4で敗れ、最終戦の花王コスメ小田原 フェニックス戦は投打に元気なく、0-3の完封負け。
 シーズンを通じ、「好ゲーム」は演じるものの、「勝ち切る」ことができなかった。投打の数字を見てみても、最下位に低迷するほどの数字でもないが、裏を返せば決定的な要素もなく、相手を完全に上回るだけの「要素」を持ち合わせていなかった……ともいえる。その「決定力」のなさが善戦・健闘はしても「勝利」をつかむことのできない状況を生み出してしまったともいえる。
 投手陣では左腕の中澤萌、右の小森美咲とも規定投球回数をクリアしたが、「サファイアセクション」で規定投球回数に達した7人の投手の中で中澤萌が6位(防御率2.78)、小森美咲が7位(3.83)となっている。
 打線では、小森真央が「サファイアセクション」打撃ランキング2位の4割5分7厘のハイアベレージを残し、7打点を挙げる活躍を見せた。「順位決定節」では、これまでとは違った厚木SCの一面を見せてくれることを期待し、今後どのようなチーム作りを進めていくのか、その「方向性」を見出す機会としてほしいものである。

善戦・健闘しながら白星に結びつかず……2勝11敗で最下位の厚木SC


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