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第47回日本女子ソフトボールリーグ1部は、4月12日(土)に愛知県名古屋市・ナゴヤドームで開幕を迎え、10月26日(日)、第10節までのレギュラーシーズンの戦いを終えた。
今シーズンの戦いを振り返ってみると、ナゴヤドームでの開幕節で昨シーズン優勝のルネサスエレクトロニクス高崎と2位のトヨタ自動車がいきなり激突。ルネサスエレクトロニクス高崎が、トヨタ自動車の「絶対的エース」モニカ・アボットに2本の本塁打を浴びせ、3-2で競り勝ち、「連覇」へ向け、好スタートを切った。
しかし、今シーズンは8月に世界選手権、9月末にアジア大会が開催されるとあって、当初から「過密日程」「ハードスケジュール」になることが予想されていたこともあり、ルネサスエレクトロニクス高崎は、「エース」上野由岐子をできる限り温存させる選手起用をとり、開幕節でも「宿敵」トヨタ自動車を相手に、「期待の大物ルーキー」濱村ゆかりを「開幕投手」に大抜擢するなど、大胆な選手起用を見せた。
その後も、「エース」上野由岐子を温存したまま、開幕4連勝。開幕5戦目でデンソーに敗れ、初黒星を喫したものの、それでもまだ開幕節でリリーフして以来、上野由岐子の登板はないまま。地元・前橋の第3節の日立戦でようやく今シーズン初先発し、完投勝利を挙げ、元気な姿を見せたのも束の間、連投となった太陽誘電戦では、「驚異の二刀流」藤田倭に特大の一発を浴びるなど、「いつもの」上野由岐子らしくないピッチングが続き、続く第4節のHonda戦、第5節の豊田自動織機戦でも、「エース」上野由岐子を投入しながら、「一発」に泣き、前半戦で3敗を喫するという苦しい展開となった。
一方、「王座奪還」を狙うトヨタ自動車は、開幕戦こそ「絶対的エース」モニカ・アボットが「宿敵」ルネサスエレクトロニクス高崎打線につかまり、2本のホームランを浴び、2-3で敗れるという「想定外」のスタートとなったが、その後はしっかりとチームを立て直し、第1節で今シーズン初勝利を挙げると、そこから破竹の9連勝。第5節のデンソー戦で、「エース」モニカ・アボットが打ち込まれ、0-7で大敗するという衝撃的な敗戦で、いったん連勝は止まったが、その敗戦が尾を引くこともなく、そこから再び9連勝。「絶対的エース」モニカ・アボットだけでなく、日本リーグの「連勝記録」を更新中の山根佐由里が、今シーズンも9勝を挙げる活躍。またも「無敗」のまま、シーズンを駆け抜け、自らの連勝記録を「31連勝」まで伸ばすと同時に、防御率0.96でランキング1位の活躍。打線も、鈴木美加が日本リーグ新記録となる打率5割2分4厘のハイアベレージを記録し、首位打者を獲得。打点王争いでも、坂元令奈と長崎望未が熾烈なタイトル争いを演じるなど、チーム力の充実、選手層の厚さとチーム内での競争の激しさを感じさせる戦いで、他チームを圧倒。最終節を待たずに1位での決勝トーナメント進出を決めた。
開幕当初、リーグを沸かせたのは関西の「老舗」シオノギ製薬の活躍。このところ下位に低迷することの多かったチームが、開幕戦の戸田中央総合病院戦に5-1で快勝すると、第1節のSGホールディングスグループ戦、Honda戦にも連勝。開幕3連勝を飾り、同率首位に立ち、「名門復活」を印象づける活躍を見せてくれたのだが、そこから「まさか……」の19連敗。第2節以降、1勝も挙げることができず、最下位に終わり、2部リーグ降格が決まってしまった。
「王座奪還」をめざすトヨタ自動車が首位を「独走」する一方、昨シーズンの覇者・ルネサスエレクトロニクス高崎が思うように星を伸ばせなかったこともあり、決勝トーナメント進出圏内である2~4位争いは大混戦。その中にあって、第2節で「エース」上野由岐子の登板がなかったとはいえ、ルネサスエレクトロニクス高崎を7-2で破り、第5節ではトヨタ自動車の「絶対的エース」モニカ・アボットを攻略。7-0で大勝したデンソーが前半戦終了時点で9勝2敗の同率首位に躍進し、ここ数年続いていたルネサスエレクトロニクス高崎、トヨタ自動車の「2強」に割って入るかに見えた。
しかし、第6節のトヨタ自動車との「再戦」で、序盤リードを奪いながら逆転負けを喫すると、投打の歯車が狂い始め、終盤失速。決勝トーナメント進出を巡る争いは、ますます混迷の度を深め、最終節・最終試合までもつれ込む近来まれに見る「大混戦」となった。
この「大混戦」から、まず抜け出したのはルネサスエレクトロニクス高崎。極力、「エース」上野由岐子を温存しながらも、「ここぞ!」という局面では、効果的に「切り札」を使い、16勝6敗で2位の座を確保した。
「切り込み隊長」山本優を筆頭に、キャプテンとしてチームを引っ張る大久保美紗、攻守の要・峰幸代、天才的なバットコントロールを誇る市口侑果、思い切りと意外性が魅力の森さやかなど、「日本代表」メンバーが揃う打線も強力。「連覇」へ向け、2位から「頂点」へ登り詰めるべく、勝負をかける。
3位に入ったのは、太陽誘電。藤田倭、尾崎望良の「左右の二枚看板」が投げるだけではなく、打撃面でもチームに貢献。特に「驚異の二刀流」藤田倭は、一時は本塁打王争いに絡むなど、破壊力抜群の打撃で打線の中軸に座り、プロ野球・北海道日本ハムファイターズの大谷翔平ばりの活躍。藤田倭、尾崎望良の「ダブルエンジン」が2007年以来となる決勝トーナメント進出の原動力となった。
また、その投手陣を支える「女房役」であり、「日本代表」でもあるキャッチャーの佐藤みなみ、いまや「日本代表」の中心選手に成長した河野美里、打撃ランキング8位に入った丸本里佳、地味ながら堅実で確実な働きを見せる岡本由香、山本晴香ら、実力者が揃う。
ここ数年、レギュラーメンバーを固定し、大きな故障者を出すことなくシーズンを戦い抜いている杉浦千恵子トレーナーのケア、コンディショニングの手腕も素晴らしい。「常連」揃いの決勝トーナメントに「新風」を吹き込むことができるか、注目が集まる。
4位は、21年連続の決勝トーナメント進出を果たした豊田自動織機。「伝説的好投手」ミッシェル・スミスを擁し、「常勝」を誇った頃の「ソツのなさ」や「したたかさ」が影をひそめ、信じられないような走塁ミスや数字に表れないミスプレーが頻発したが、最後は「指定席」に帰ってきた。
「剛腕」ケイラニ・リケッツが10勝(リーグ3位)を挙げ、防御率1.11(リーグ2位)、奪三振96(リーグ1位)と安定した投球内容を見せ、後半の勝負どころを勝ち切り、打線も「日本代表」でもある国吉早乃花を中心に、狩野亜由美、中森菜摘ら好打者を揃え、洲鎌夏子、横野涼といった「くせ者」が脇を固めている。選手層の厚さ、タレントの豊富さではトヨタ自動車と「双璧」のチームだけに、決勝トーナメントでの巻き返しを期待したい。
首位独走のトヨタ自動車、2位・ルネサスエレクトロニクス高崎、3位・太陽誘電、4位・豊田自動織機の4チームが決勝トーナメントへ駒を進め、「最後の決戦」に臨むことになる。
惜しかったのはデンソー。前半戦終了時点では同率首位に躍進、最後まで決勝トーナメント進出を争い、最終戦では「世界のエース」上野由岐子を攻略。ルネサスエレクトロニクス高崎に3-0で勝利し、15勝7敗で太陽誘電、豊田自動織機と同率で並んだが、同率で並ぶ3チームの「直接対決」の結果で順位が決定され、豊田自動織機に連敗したのが響き、トヨタ自動車、ルネサスエレクトロニクス高崎の「2強」には3勝1敗と勝ち越しながら、5位に甘んじた。
また、6位・Honda、7位・日立も最後まで決勝トーナメント進出争いに絡み、最終節・最終日になっても、最大で5チームが同率に並ぶ可能性がある、という大混戦を演出した。日立は最終戦で4位に滑り込んだ豊田自動織機を最後まで苦しめ、Hondaはトヨタ自動車に勝利し、「意地」を見せると同時に、来シーズンにつながる戦いを見せた。
これに8勝14敗の戸田中央総合病院が8位、7勝15敗のSGホールディングスグループが9位で続き、2010年以来の「1部復帰」を果たした伊予銀行が4勝18敗で10位。1部残留を決めた。
戸田中央総合病院、SGホールディングスグループともに、外国人選手を補強してシーズンに臨みながら、上位争いに絡むことができず、この位置にとどまった。
特に、SGホールディングスグループは、「主砲」ステーシー・ポーターが本塁打王(9本塁打)を獲得する活躍を見せ、全日本総合女子選手権大会でも決勝進出を果たすなど、決して力のないチームではない。両チームとも、来シーズンこそは上位争いを演じてほしいものである。
伊予銀行は、「1部残留」に照準を定め、その「ライバル」となるであろうペヤングとシオノギ製薬を徹底して叩く戦略に出た。今シーズンの勝ち星(4勝)は、すべてペヤング、シオノギ製薬との「直接対決」に連勝して得たもの。戦略がズバリと当たったともいえるが、来シーズンは「1部残留」ではなく、上位争いを演じるチームとなることが期待される。
2部リーグ降格を巡る争いも、決勝トーナメント進出争い同様、熾烈を極め、最終節・最終日までもつれ込んだ。
ペヤングは開幕から泥沼の10連敗。第5節のシオノギ製薬戦で今シーズン初勝利を挙げ、第7節のシオノギ製薬戦では5回まで5点をリードされながら、奇跡的な大逆転勝ち。最終戦で戸田中央総合病院戦に3-0で快勝し、3勝19敗でシオノギ製薬と同率で並び、「直接対決」での連勝がモノをいい、最下位を脱出。2部リーグへの自動降格を回避し、2部リーグ2位・靜甲との入替戦に臨むことになった。
一方、シオノギ製薬は開幕3連勝を飾りながら、その後、1勝も挙げることができず、最後は同率ながらペヤングに逆転を許し、2部リーグへの自動降格が決まってしまった。
この結果、上位4チーム(1位・トヨタ自動車、2位・ルネサスエレクトロニクス高崎、3位・太陽誘電、4位・豊田自動織機)は、11月15日(土)・16日(日)の両日、京都府京都市・わかさスタジアム京都で行われる「決勝トーナメント」へと駒を進め、「最後の決戦」に挑むことになる。
また、11位のペヤングは、11月13日(木)・14日(金)の両日、静岡県伊豆市・天城ドームで行われる2部リーグ2位・靜甲との「入替戦」に臨み、「1部残留」をかけて戦うことになる。
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