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[2022年04月09日] 「第55回日本女子ソフトボールリーグ」 プラチナセクション展望

「第55回日本女子ソフトボールリーグ」
プラチナセクション展望


 今シーズンから長きにわたる「歴史と伝統」の上に、また新たな1ページを加えていくことになる「第55回日本女子ソフトボールリーグ」。すでに3月28日(月)に開幕を迎えた「ニトリ JD.LEAGUE 2022」は、昨シーズンまで「女子リーグ1部」に所属していた12チーム、「女子リーグ2部」に所属していた4チームの計16チームが参戦。この「第55回日本女子ソフトボールリーグ」は、そのJD.LEAGUEに参入しなかった「女子リーグ2部」の4チーム、「女子リーグ3部」の6チームに、「新規参入」2チームを加えた12チームによって再編成され、「新たなスタート」を迎えることになった。
 試合方式は、リーグ参加12チームを前年度の成績に基づき、「プラチナセクション」「サファイアセクション」の2セクションに振り分け、各セクション内で2回総当たりのリーグ戦を実施。さらに「プラチナセクション」「サファイアセクション」が対戦する交流節(各セクションの前半戦の順位に基づき、3試合を実施)、各チーム計13試合を戦い、そのリーグ戦の順位に基づき、「順位決定節」を実施し、最終順位を決定。「プラチナセクション」「サファイアセクション」の1位・2位の4チームを「Aブロック」、3位・4位の4チームを「Bブロック」、5位・6位の4チームを「Cブロック」とし、A・B・C各ブロック内でそれぞれ1回総当たりのリーグ戦を実施。1位~4位、5位~8位、9位~12位の最終順位を決定する試合方式で覇が競われることになる(試合方式はの詳細こちら)。
 ここでは「プラチナセクション」に所属する6チームを紹介するとともに、シーズンの行方を占ってみたい。

大和電機工業(前年成績:2部リーグ4位)
※チームプロフィールはこちら 

 昨シーズン、2部リーグでJD.LEAGUE参入が決まっていた4チームに割って入り、4位となり、「意地」を見せた大和電機工業。2015年の「第55回全日本実業団女子選手権大会」で優勝を飾る等、創部51年目を迎える「歴史と伝統」を誇るチームである。
 「大和電機スタイル」ともいうべき「打って打って打ちまくる!」豪快な打撃が魅力のチームだが、昨シーズン「2部リーグ」打撃ランキング2位、打率4割4分7厘と打ちまくった岡村香織を含む7名の選手が「現役引退」。新たに7名の「ルーキー」を迎えるという今シーズンは、「新旧交代」「世代交代」のシーズンともいえよう。
 投手陣の中心は、大串都未希。昨シーズン「2部リーグ」投手ランキング4位の防御率1.71、4勝3敗の成績を残しており、「エース」としての活躍が期待されている。
 残念ながら昨シーズンは勝ち星を挙げることのできなかった大依春奈、木村美咲の成長、「将来のエース候補」として期待される「ルーキー」古川歩佳がどれだけ「戦力」となり、「エース」を助けることができるかもチームの浮沈のカギを握る。
 打線を引っ張るのは堀あかね。昨シーズン「2部リーグ」打撃ランキング10位の打率3割5分1厘のハイアベレージを残し、本塁打3・打点7の活躍を見せ、「盗塁王」のタイトルも獲得。「新キャプテン」車亜紀子(2割2分9厘・本塁打1・打点5)、立川可純(2割3分5厘・本塁打1・打点5)、古賀藍奈(2割3分7厘・打点4)の奮起にも期待したいところか。
 大きな戦力の入れ替わりもあり、チームとして「未知数」な部分もあるが、「大和電機工業らしい」明るく、元気で、豪快な試合運びで今シーズンの「第55回日本女子ソフトボールリーグ」プラチナセクションを沸かせてくれることを期待したい。


 

大和電機工業の「エース」として期待される大串都未希
YKK(前年成績:2部リーグ7位)
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 YKKも創部47年目を迎える「歴史と伝統」を誇るチーム。今シーズンは部員数12名という「少数精鋭」で臨むことになる。
 「エース」は左腕・古川由乃。昨シーズンはわずか「1勝」(3敗)に終わったが、2019年のシーズンには、2部リーグの「優秀選手賞」を受賞する等の「実績」もあり、今シーズンの「復調」が期待される。また、昨シーズン勝ち星こそなかったが、6試合・14回2/3を投げ、防御率1.43と安定した数字を残している市六有那のさらなる成長にも期待がかかる。
 打線の中心は、「キャプテン」大内麻里奈。打率3割1分・本塁打4・打点17で昨シーズン「2部リーグ」のベストナイン(三塁手)にも輝いた。特に本塁打4・打点17は「本塁打王」「打点王」のタイトルを獲得した山科真里奈に「あと1本」「あと1打点」に迫る数字。今シーズンもその爆発力のある打撃でチームを牽引する。
 同じく「ベストナイン」(遊撃手)に輝いた宮坂佑希にも注目。打撃ランキング7位の打率4割・本塁打1・打点1の成績を残しているが、特筆すべきは得点11の数字。「チャンスメーカー」として突破口を開き、出塁し、本塁まで還ってきているという「証」となる「得点」でこれだけの数字を残していることを考えると、今シーズンも「切り込み隊長」「チャンスメーカー」としての役割を担うことになりそうだ。


 

昨シーズン「2部リーグ」ベストナインに輝いたYKK・宮坂佑希
MORI ALL WAVE KANOYA(前年成績:3部リーグ優勝)
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 昨シーズン「3部リーグ」を制したMORI ALL WAVE KANOYA。今シーズンは、この「第55回日本女子ソフトボールリーグ」で旋風を巻き起こし、「台風の目」となりそうな「注目」のチームだ。
 投手陣は、昨シーズン「3部リーグ」で投手ランキング1位、防御率0.35・5勝1敗の成績を残した中野花菜が「エース」として君臨。かつて2013年の「第10回世界女子ジュニア選手権大会」(現在は「女子U18ワールドカップ」に改称)で「優勝投手」となり、2014年の「第14回世界女子選手権大会」(現在は「女子ワールドカップ」に改称)で「世界制覇」、日本として初の「世界選手権連覇」の一員となった「エース」がチームを支える。
 また、現在、「ニトリ JD.LEAGUE 2022」で「唯一のクラブチーム」と奮戦する大垣ミナモでプレーし、「日本リーグ」時代に「1部昇格」に貢献した左腕・竹原由菜(防御率0.44・2勝0敗)の存在も心強い。この「左右の二枚看板」がプラチナセクション「最強」の投手陣を編成する。
 打線は、昨シーズン「3部リーグ」打撃ランキング1位、打率4割7分1厘のハイアベレージを残し、本塁打3・打点8の活躍を見せた上村麗。12得点・5盗塁とチャンスメイクを担い、還す役割も担う、まさに「打線の中心」となる打者だ。
 また、「投打二刀流」の竹原由菜が打線でも「重要な役割」を担う。打撃ランキング3位の打率4割1分9厘・本塁打2・打点11とバッティングでも光る「才能」を見せている。
 「3部リーグ」からの参戦ながら、プラチナセクションの順位争いをリードし、今シーズン「新たなスタート」を切った「第55回日本女子ソフトボールリーグ」の「優勝候補筆頭」に挙げられるほど、戦力は充実している。


 

MORI ALL WAVE KANOYAの「エース」は「世界一」の経験を持つ中野花菜
ペヤング(前年成績:3部リーグ5位)
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 ペヤングは、発売から47年となる「カップ焼きそば」で知られるチームであり、2013年~2015年の3シーズン、「日本リーグ」1部を経験した「実績」を持つチームである。当時、その「1部リーグ」での試合風景で、ペヤングが得点を挙げると、スタンドに「ペヤングカップ焼きそば」が配られるという、「大盤振る舞い」があったことが思い出される。
 2015年、11位の成績で「入替戦」には回ったものの、大垣ミナモの「挑戦」を退け、1部リーグ残留を決めながら業務多忙のため「活動休止」を発表。1年間の活動休止期間を経て、2017年のシーズンから活動を再開。今日に至っている。
 昨シーズン「エース」として力投を見せた川添恵が現役を引退。規定投球回数に達した投手はゼロ。6試合・15回1/3を投げ、防御率3.20(0勝3敗)の古本緋里、3試合・3回1/3の登板で防御率4.20・0勝0敗の池上紗葵の飛躍と、「新戦力」としてチームに加わった山下実依(山梨学院高)、星野圭音(福島東稜高→新島学園短期大)、髙橋明日香(前橋西高)の「ルーキートリオ」がどこまで「戦力」になれるか……もチーム成績を左右する。
 打線にも規定打席に到達した選手の中に「3割打者」はいないが、宮本明日香(打率2割6分7厘・打点2)、大﨑小夏(2割5分9厘・本塁打1・打点5)、「新キャプテン」小野友里奈(打率2割3分1厘・打点2)が奮起し、打線を引っ張りたいところだ。SGホールディングス ギャラクシースターズから移籍加入した釣春香の存在にも期待が集まる。
 昨シーズンの数字を見る限り、厳しい数字が並ぶが、「新戦力」11名が加わるだけに、過去のデータは参考にならない。チームが掲げる「新・日本女子リーグで心機一転上位をめざします!」の心意気やよし! リーグに「ペヤング旋風」が吹き荒れ、再び「大盤振る舞い」の日々が還ってくることを期待しよう!!


 

ペヤングの「エース候補」は古本緋里。さらなる「成長」を期待!
ルネス紅葉スポーツ柔整専門学校(前年成績:3部リーグ6位)
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 ルネス紅葉スポーツ柔整専門学校は、「専門学校」のチームということもあり、基本的に2年で卒業、戦力が入れ替わるため、チーム作りが難しい……という独特の事情がある。
 今シーズンも7名の選手がチームを「卒業」していったが、そのうち1名が「ニトリ JD.LEAGUE 2022」でプレーすることになり、2名はこの「第55回日本女子ソフトボールリーグ」の他チームへと移り、今度は「ライバル」として戦うことになる。
 また、新規加入選手は12名を数え、チームの「戦力」はまさに様変わり、一新されたといっても過言ではないチーム構成となっている。
 投手陣に規定投球回数に達した投手はおらず、杉浦加奈がチーム「唯一」の「1勝」を挙げているが、原田真衣、我妻美思はいずれも未勝利。大野日菜に至っては「登板なし」とあって、「ルーキー」植田七菜(神村学園高等部伊賀)を含めた投手陣の「底上げ」が急務だ。
 打線は、昨シーズン「3部リーグ」の打撃ランキング6位に食い込む活躍を見せた菊池七海に注目! 打率3割4分5厘のハイアベレージを残したバッティングに今シーズンも期待がかかる。打撃ランキング9位、打率3割3分3厘・本塁打1・打点3の松田采弓とともに打線を引っ張りたいところだ。
 どちらにしても、これだけの選手の入れ替えがある以上、そのチーム力は未知数。総勢12名の「ルーキー軍団」の活躍によっては、「予想外」「想定外」の躍進もあり得る。若いチームだけに、その若さの「無限の可能性」でフレッシュな戦いを見せてくれることを期待したい。


 

ルネス紅葉スポーツ柔整専門学校・菊池七海。昨シーズンに続く活躍を期待!!
VONDS市原(新規加盟)
※チームプロフィールはこちら

 今シーズンから「新規加盟」、「第55回日本女子ソフトボールリーグ」に参戦するVONDS市原。昨シーズン「第42回全日本クラブ女子選手権大会」でベスト4進出。「優勝候補」の一角に挙げられていたMORI ALL WAVE KANOYAを準々決勝で延長タイブレークの末、5-3で破る等、快進撃を見せたことは記憶に新しい。
 チームを支える「エース」は高田香。「第42回全日本クラブ女子選手権大会」でベスト4進出の「原動力」となり、準決勝までの4試合すべてに登板。3勝を挙げ、3試合に完投。準決勝も惜しくも逆転負けを喫したとはいえ、3失点の完投。防御率1.40と文字通り「フル回転」、獅子奮迅の活躍を見せた。
 打線は、かつてデンソー、NECプラットフォームズの「日本リーグ」チームでプレーし、2014年、2017年の2度、「2部リーグ」の「優秀選手」に輝き、2018年には打率6割8分・本塁打4・打点17の驚異的な数字を残し、「MVP」にも輝いた「実績」を誇る和田美樹。ジュニア時代に「女子GEM3(U19)日本代表」(現在はU18にカテゴリー変更)として2018年「第7回アジア女子ジュニア選手権大会」に出場した経歴を持つ上杉緋呂らが「中核」となる打線で「第55回日本女子ソフトボールリーグ」に旋風を巻き起こす。


 

「実績十分」のVONDS市原・和田美樹。日本リーグの舞台でその「勇姿」再び…

 以上、「プラチナセクション」所属6チームの横顔を紹介してきたが、「プラチナセクション」の順位争いは、昨シーズン「3部リーグ」を制したMORI ALL WAVE KANOYAを中心に展開されるのではないだろうか。「1部リーグ」や「世界の舞台」を経験した選手がチームの「中核」を担い、戦力的なバランスも整っている。昨シーズン、旧・1部リーグ勢、現・JD.LEAGUE勢が揃う「第73回全日本総合女子選手権大会」で、「2部リーグ」「3部リーグ」勢で唯一、1回戦を突破。2回戦で対戦した「日本リーグチャンピオン」のビックカメラ高崎に敗れたとはいえ、「1点」を奪ったことも、「貴重な経験」となり、今シーズンへ向けた「大きな自信」になったはずである。
 「2部リーグ」から参入の大和電機工業、YKKとの上位争いになると見られるが、戦力的な入れ替わりも多く、チームが「落ち着く」のに少しばかり時間がかかることを考えると、MORI ALL WAVE KANOYAのチームの熟成度・完成度の高さがモノをいう可能性が高い。
 「3部リーグ」参入組のペヤング、ルネス紅葉スポーツ柔整専門学校も同様に選手の入れ替わりが非常に激しく、現時点では「未知数」な部分が多い。もちろん「未知数」であるが故に、予想できない「大爆発」や想定外の「快進撃」もあり得るが……。
 むしろ「新規参入」のVONDS市原が「台風の目」「ダークホース」的な存在になることも考えられる。昨シーズン、「全日本クラブ女子選手権大会」ベスト4進出の実績もあり、十分に「戦える」だけの戦力は整っている。
 まずはこの「プラチナセクション」で上位2チームに入らなければ「優勝」の可能性が消えてしまう。2位までの順位を確保した上で、「順位決定節」での両セクション上位2チーム・計4チームによる「優勝を決めるリーグ戦」での戦い、戦術・戦略も用意しておく必要がある。

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