「第55回日本女子ソフトボールリーグ」
サファイアセクション展望

　今シーズンから長きにわたる「歴史と伝統」の上に、また新たな１ページを加えていくことになる「第55回日本女子ソフトボールリーグ」。すでに３月28日（月）に開幕を迎えた「ニトリ JD.LEAGUE 2022」は、昨シーズンまで「女子リーグ１部」に所属していた12チーム、「女子リーグ２部」に所属していた４チームの計16チームが参戦。この「第55回日本女子ソフトボールリーグ」は、そのJD.LEAGUEに参入しなかった「女子リーグ２部」の４チーム、「女子リーグ３部」の６チームに、「新規参入」2チームを加えた12チームによって再編成され、「新たなスタート」を迎えることになった。
　試合方式は、リーグ参加12チームを前年度の成績に基づき、「プラチナセクション」「サファイアセクション」の２セクションに振り分け、各セクション内で２回総当たりのリーグ戦を実施。さらに「プラチナセクション」「サファイアセクション」が対戦する交流節（各セクションの前半戦の順位に基づき、３試合を実施）、各チーム計13試合を戦い、そのリーグ戦の順位に基づき、「順位決定節」を実施し、最終順位を決定。「プラチナセクション」「サファイアセクション」の１位・２位の４チームを「Aブロック」、３位・４位の４チームを「Bブロック」、５位・６位の４チームを「Cブロック」とし、A・B・C各ブロック内でそれぞれ１回総当たりのリーグ戦を実施。１位～４位、５位～８位、９位～12位の最終順位を決定する試合方式で覇が競われることになる（ 試合方式はの詳細こちら）。
　ここでは「サファイアセクション」に所属する６チームを紹介するとともに、シーズンの行方を占ってみたい。

靜甲（前年成績：２部リーグ６位） ※チームプロフィールはこちら　 　昨シーズン、２部リーグ６位、「全日本実業団女子選手権大会」で「連覇」を含む４回の優勝を誇る創部43年目を迎えた「強豪」チームである。 　「日本リーグ」でも2007年、2011年の２シーズン「１部リーグ」を経験。いずれも「最下位」に終わり、１シーズンで「下部リーグ降格」の憂き目にあってはいるが、「貴重な経験」を積んだ。その後も2014年、「２部リーグ」２位で「入替戦」に駒を進めたが、ペヤングに連敗。３度目となる「１部昇格」を逃がすと、2019年には「３部リーグ」に転落。2020年「３部リーグ」で全勝優勝を果たし、１シーズンで「２部リーグ」に復帰。昨シーズンは「２部リーグ」６位という成績を残している。 　「エース」は山本すみれ。昨シーズン「２部リーグ」投手ランキング３位、防御率1.59・３勝６敗の成績を残している。昨シーズンは勝ち星のなかった豊田彩乃の奮起・成長、「新加入」の「ルーキー」東野真咲（駿河総合高）が「戦力」となり、「エース」を助けることができれば……といったところか。 　打線は「キャプテン」鹿目真実が引っ張る。昨シーズン「２部リーグ」で打率３割４分・本塁打１・打点３と気を吐いた。ただ……規定打席に到達した選手で、他に「３割打者」はおらず、チーム打率２割２厘、総得点27はいずれも「２部リーグ」最下位と振るわず、投手陣がチーム防御率1.94と圧倒的な強さで「優勝」したＳＧホールディングス ギャラクシースターズに次ぐ数字を残していただけに、打線の奮起があれば……の感は否めない。昨シーズンは打率１割１分８厘・本塁打０・打点０と不振をかこったが、ジュニア時代の2015年「第11回世界女子ジュニア選手権大会」（現在は女子Ｕ18ワールドカップに改称）に出場経験があり、大学時代にも「大学日本代表」に選出された経歴を持つ潜在能力の高い本間睦、打率２割ちょうどながら３本塁打・打点９と「得点源」になった中尾萌らが「本来の力」を発揮してくれれば、投手陣に計算が立つだけに「勝機」は十分にある。	靜甲の「エース」山本すみれ。その「右腕」にチームの浮沈がかかる
Ｃｉｔｒｉｎｅ Ichinomiya（前年成績：２部リーグ８位） ※チームプロフィールはこちら 　今シーズンから「Ｄｒｅａｍ Ｃｉｔｒｉｎｅ」が、チームの「本拠地」である愛知県一宮市の名を冠した「Ｃｉｔｒｉｎｅ Ichinomiya」にチーム名を改称。「新たなスタート」となった「第55回日本女子ソフトボールリーグ」に新たなチーム名で参戦する。 　「Ｄｒｅａｍ Ｃｉｔｒｉｎｅ」時代には、2018年「第39回全日本クラブ女子選手権大会」で優勝、2019年、そして昨シーズンも同大会ベスト４と地域に根ざした「クラブチーム」として活動する「強豪」である。 　投手陣の中心は松本菜摘。昨シーズン「２部リーグ」11試合に登板し、63回1/3を投げ、防御率3.43・３勝６敗の成績を残している。 　昨シーズン防御率3.86・１勝０敗の川原麻里、登板試合数（３）・投球回数（９回2/3）こそ少ないが、防御率0.00・０勝１敗の田村真央の成長、「ルーキー」山下紗季がどこまでやれるか……も期待を持って見守りたいところだ。いずれにせよチーム防御率3.45、「２部リーグ」最下位の数字を改善させることがチーム浮上のカギになる。 　打線では、昨シーズン「２部リーグ」打撃ランキング５位、打率４割２分１厘、本塁打こそなかったが三塁打３・二塁打３・打点５の活躍を見せた宮本星南に注目。勝負どころで「渋い働き」を見せ、チームを支える「ベテラン」青野可奈（２割９分３厘・打点３）、「キャプテン」好川真悠子（２割３分９厘・打点２）の奮起にも期待がかかる。 　昨シーズン、チーム本塁打ゼロ、総得点27と長打力不足・得点力不足に泣いただけに、打線全体へのテコ入れ、底上げが急務となる。	今シーズンから「Ｃｉｔｒｉｎｅ Ichinomiya」にチーム名を改称。「キャプテン」好川真悠子がチームを引っ張る
花王コスメ小田原 フェニックス（前年成績：３部リーグ準優勝） ※チームプロフィールはこちら 　昨シーズン「３部リーグ」で最後まで「優勝争い」を演じた花王コスメ小田原 フェニックス。2016年「第56回全日本実業団女子選手権大会」で優勝を飾ったこともある創部40年目を迎える「歴史と伝統」を誇るチーム。今シーズンは「新戦力」の補強ゼロ、総員13名の「少数精鋭」でシーズンに臨む。 　「エース」は朝比奈さくら。昨シーズン「３部リーグ」投手ランキング４位、８試合に登板し、投球回数33回を投げ、防御率1.06・５勝０敗の成績を残している。同じく７試合に登板し、投球回数32回、防御率2.41・３勝２敗の飯島咲燿子とともに投手陣を支える。 　打線は、昨シーズン「３部リーグ」打撃ランキング４位、打率３割５分・打点３の活躍を見せた南早紀、同ランキング５位、打率３割４分６厘・打点６の三浦亜優香が牽引。「キャプテン」岡田南（３割２分３厘・打点４）のリーダーシップ、キャプテンシーにも期待したいところだ。 　「新戦力」の加入はないが、裏を返せば、チームは円熟味を増し、熟成を深めているともいえる。他チームにはない「まとまり」や「チームワーク」でチーム一丸、「新たなリーグ」でさらなる活躍・躍進をめざす。	花王コスメ小田原 フェニックスの「エース」朝比奈さくら。その出来にチームの「命運」がかかっている
厚木ＳＣ（前年成績：３部リーグ３位） ※チームプロフィールはこちら 　厚木ＳＣは過去、「全日本クラブ女子選手権大会」で３度の準優勝。優勝にこそ手が届いていないが、上位進出の「常連」チームである。 　「エース」は中澤萌。昨シーズン「３部リーグ」投手ランキング３位、９試合に登板し、41回1/3を投げ、防御率0.68・２勝２敗の成績を残した。ともにチームを支えた矢作実緒（防御率1.52・３勝３敗）が「現役引退」。「エース」にかかる比重はより大きなものとなった。新たに加わった「ルーキー」小森美咲（鹿屋女子高）がどれだけ「戦力」となり、「エース」を助けることができるか……にも注目したいところだ。 　打線は、昨シーズン「３部リーグ」で打率３割１分・打点２の成績を残した「キャプテン」大場彩香が文字通りチームを引っ張る。昨シーズン、打率３割４分５厘・打点２と活躍した風間萌子の抜けた「穴」をいかに埋めるか！？　昨シーズン、打撃不振で低迷したチーム打率２割１分５厘をどこまで引き上げることができるか、攻撃力アップ・打撃力の向上がカギになりそうだ。 　昨シーズンから選手10名が抜け、５人の新人選手を迎え、チームは様変わり。今シーズンどんな戦いを見せてくれるか「未知数」なところも多いが、それだけに一試合一試合、経験を積むことでどんな「変貌」を遂げてくれるか楽しみでもある。	厚木ＳＣの「キャプテン」大場彩香。打線の「中心」として活躍を期待！
平林金属 Peachblossoms（前年成績：３部リーグ４位） ※チームプロフィールはこちら 　平林金属 Peachblossomsは、かつて2007年から2011年まで「全日本クラブ女子選手権大会」で「５連覇」を達成する等、輝かしい戦歴を誇っている。また、「男子」は押しも押されぬ「日本リーグチャンピオン」。数々の国内タイトルを手にし、今や日本男子ソフトボールの「顔」である松田光、「現役・世界最速」小山玲央ら「日本代表」を揃える日本屈指の「強豪」チームである。「女子」もそれに続きたいところだ。 　投手陣の中心は、昨シーズン「３部リーグ」投手ランキング２位、７試合に登板し、投球回数26回を投げ、防御率0.54・３勝０敗の橋口紫織。今シーズンからピッチャーとしては珍しく「キャプテン」も務める。同投手ランキング５位、７試合に登板し、投球回数36回1/3を投げ、防御率1.35・２勝３敗の岡﨑栞菜とともに投手陣を支える。昨シーズンは投手としての出番は少なかったが、「投打二刀流」の左腕・中村絢夏の存在も心強い。 　打線は昨シーズン「３部リーグ」で打撃ランキング２位、打率４割５分８厘・打点８の成績を残した柏坂恵美が「核」となり、川渕真由（２割７分６厘・打点６）がそれに続く。打席数こそ少ないが打撃センスのある一岡楓（４割５分５厘）、「投打二刀流」でチーム「唯一」の本塁打を放った「エース」橋口紫織（３割３分３厘・本塁打１・打点１）、同じく「投打二刀流」の中村絢夏（２割５分・打点１）らの起用法によっては、チーム打率２割１分５厘・総本塁打１・総得点25の「打撃不振」「得点力不足」から抜け出すことができるかもしれない。どちらにしても「エース」で「キャプテン」の橋口紫織の働きがチームの「命運」を左右することになりそうだ。	今シーズンから「キャプテン」に就任した橋口紫織。「エース」で「キャプテン」の重責を担う
小泉病院 Blue Arrows（新規加盟） ※チームプロフィールはこちら 　今シーズンから「新規加盟」、「第55回日本女子ソフトボールリーグ」に参戦する小泉病院 Blue Arrows。創部４年目の「若い」チームだ。 　投手陣の中心は原田悠。「日本リーグ１部」伊予銀行での登板経験も有する「経験豊富」なピッチャーだ。「地元」広島出身の日野知奈、左腕・玉田彩音の３人の投手をどう組み合わせ、どう起用していくか、かつて「男子日本代表」として世界選手権に二度出場した経歴を持つ木谷謙吾監督の「手腕」にも注目が集まる。 　打線も「１部リーグ」トヨタ自動車時代に「優勝」を経験している山下りらを筆頭に、「キャプテン」の立川夏波、上田爽華、穐山奈央、山岡未歩、佐々木彩葉らＳＧホールディングス、日本精工、伊予銀行で「１部リーグ」を経験したメンバーが集結。「新規参入」とはいえ、何か「やってくれそう……」な個性的で力を持った選手が揃っている。	ジュニア時代に「世界一」を経験している小泉病院 Blue Arrows・山下りら。日本リーグに「旋風」を巻き起こせ！

　以上、「サファイアセクション」所属の６チームの横顔を紹介してきたが、「２部リーグ」で「実績」のある靜甲、Ｃｉｔｒｉｎｅ Ichinomiyaが上位争いをリードしていく形が予想されるが、昨シーズンの成績を見る限り、「３部リーグ」から参入の花王コスメ小田原 フェニックス、厚木ＳＣ、平林金属 Peachblossomsの３チームが「３部リーグ」上位（２位・３位・４位）であることを考えると、この３チームにも十分にチャンスはある。
　また、「新規参入」の小泉病院 Blue Arrowsも投打に「１部リーグ」を経験した選手がおり、決して侮れない戦力を有している。
　そうなると「絶対的」なチーム、他を「圧倒」するようなチームは存在せず、６チームすべてに、展開によって、その戦い方によって、「チャンス」があるといえよう。まずはこの「サファイアセクション」の上位２チームに入らなければ、その時点で「優勝」の可能性がなくなってしまう。上位２チームに入り、「順位決定節」で「優勝」をかけて戦う「権利」を手にした上で、両セクション上位２チーム・計４チームで戦うことになる「優勝をかけたリーグ戦」をいかに戦い抜くか、その戦術・戦略を立てていかなければならない。